稲森佑貴のセッティングを読み解く基礎知識
セッティングを見る前に押さえたいこと
稲森選手が「曲がらない」選手として注目されるのには、記録上の裏付けがあります。日本ゴルフツアー機構(JGTO)によると、2024年のフェアウェイキープ率は80.957%で1位。一方、2025年の年間成績は77.832%で2位となり、勝亦悠斗選手が79.283%で1位でした。「常に1位」といった古い紹介をそのまま使わず、年度を添えて数字を見るのが正確です。ただし、フェアウェイキープ率だけで、クラブのどの性能が好成績を生んだかまでは判断できません。

セッティングを読む際の基本は、ブランド名を並べることではなく、ドライバーからパターまで14本がどう役割分担しているかを見ることです。ロフト角はクラブの基本情報ですが、同じロフトでもヘッド、シャフト、打ち方によって実際の飛び方は変わります。稲森選手の選択を参考にするなら、「本人が何度を使うか」と「自分がその番手で何ヤードを安定して打てるか」を分けて考えましょう。
2025年取材時の14本とシャフト
GDO掲載の2025年東建ホームメイトカップ取材データを、番手ごとに整理しました。ドライバー1本、フェアウェイウッド2本、ハイブリッド2本、アイアン6本、ウェッジ2本、パター1本で合計14本です。以下は取材時点の記録であり、2026年9月時点の使用クラブを断定する一覧ではありません。シャフトが明記されていないパターについては、型番のみ示します。

| 項目 | 基準・内容 | 備考 |
|---|---|---|
| ドライバー・1本 | スリクソン ZXi、9度 | SPEEDER NX GREEN、60g台・S |
| フェアウェイウッド・2本 | スリクソン ZXi、3番15度・5番18度 | SPEEDER NX GREEN、60g台・S |
| ハイブリッド・2本 | スリクソン ZXi、3番19度/スリクソン ZX、4番22度 | 3番はテンセイ プロ 1K ハイブリッドシリーズ、4番はスチールファイバーi95 |
| アイアン・6本 | スリクソン ZXi7、5番~PW | NSプロ モーダス3 プロトタイプ |
| ウェッジ・2本 | クリーブランド RTZ、50度/RTX DEEP FORGED 2、58度 | ともにNSプロ モーダス3 プロトタイプ |
| パター・1本 | Ai-ONE SQUARE 2 SQUARE MAX ストライプ | GDO掲載の取材時モデル |
| ボール | スリクソン Z-STAR XV〈2025年〉 | クラブ14本の本数には含めない |
表で注目したいのは、5番ウッドが18度、3番ハイブリッドが19度と、表示ロフトが近い点です。ロフト差が小さいからといって、直ちに「同じ距離しか打てない無駄な2本」とは言えません。ウッドとハイブリッドでは、実際の打ち出し、弾道、地面からの打ちやすさが異なり得ます。ただし、稲森選手がこの2本に具体的にどんな飛距離差や使い分けを設定しているかは、この掲載一覧だけでは分かりません。そこは本人の意図として断定せず、アマチュアが試打で確認すべき着眼点として捉えるのが適切です。
ドライバーと長い番手の着眼点
2025年の取材では、ドライバーは9度のスリクソン ZXi、シャフトは60g台・SのSPEEDER NX GREENでした。フェアウェイウッドの3番と5番にも同じ名称・重量帯・硬さのシャフトが掲載されています。ただし、同じ仕様表記だからといって、組み上がったクラブの振り心地まで同一とは限りません。購入時は型番だけで決めず、それぞれを地面から、またはティーアップして打った際の結果を確認したいところです。
一方、3番ハイブリッドにはテンセイ プロ 1K ハイブリッドシリーズ、4番にはスチールファイバーi95が記されています。FWからハイブリッドまでを単純に同じシャフトで統一していないことが分かります。ただし、掲載情報だけで「このシャフトにした理由」や「硬さをどう調整したか」を読み解くことはできません。セッティングの見方としては、3番ウッド、5番ウッド、3番ハイブリッド、4番ハイブリッドを一本ずつ独立して評価するより、長い距離にどんな打球の選択肢を用意しているかに注目すると理解しやすくなります。
- まず、ドライバーと3番ウッドは、飛距離だけでなく左右の散らばりを見比べる。
- 次に、5番ウッドと3番ハイブリッドは、ロフト表示ではなく実際のキャリーと弾道を比べる。
- 最後に、4番ハイブリッドと5番アイアンの間に、必要な距離差があるか確認する。
これを自分のクラブ選びに置き換えるなら、試打時に「最も飛んだ一球」だけを採用しないことが重要です。複数球を打ち、キャリーのばらつき、ミスの方向、芝から打った際の高さを見ます。例えば5番ウッドとハイブリッドが似たキャリーでも、一方が高く止まりやすく、もう一方が低い弾道を打ちやすいなら、使う場面を分けられる可能性があります。反対に、両者の距離も弾道も重なるなら、その枠を別の距離を補う番手に充てる選択もあります。
アイアン・ウェッジ・パターの構成
アイアンはZXi7の5番からPWまで。ウェッジには50度のRTZと58度のRTX DEEP FORGED 2が入り、掲載上、これらのシャフトはNSプロ モーダス3 プロトタイプです。ブランドやシリーズが異なるウェッジを組み合わせていることは確認できますが、ソール形状の好みやバウンス角など、表にない調整内容までは推測できません。アマチュアが参考にする際は「同じ50度・58度を買う」よりも、手持ちのPWの実際の飛距離から、短い距離に大きな空白がないかを先に確認しましょう。
特にウェッジ間のロフト差だけを見て距離差を決めつけるのは避けたいところです。フルショットのキャリーに加え、振り幅を抑えたショットで狙う距離、バンカーや深いラフから使う場面まで整理すると、必要な本数が見えてきます。50度と58度の2本で距離を作るのが自分には難しいなら、稲森選手の本数に合わせる必要はありません。プロの構成は「正解の買い物リスト」ではなく、自分の苦手な距離を発見するための比較材料です。
パターは、2025年取材の一覧では「Ai-ONE SQUARE 2 SQUARE MAX ストライプ」です。過去の記事に別のパター名が出てきても、取材年が違えば矛盾とは限りません。たとえばGDOの2023年ACNチャンピオンシップ最終日取材では、「ストローク ラボ ブラック TEN」が掲載されていました。「稲森選手のパターはこれ一択」と固定して紹介するより、どの大会時点の情報かを添えるほうが、読者にとって役立ちます。
2026年の変更情報と真似する順序
この報道が示すのは、2025年のセッティング表にある「Z-STAR XV〈2025年〉」を、2026年9月現在の使用球として無条件に書き続けるべきではない、ということです。ただし、新ボールの記事を根拠に、ドライバーからパターまでの14本すべてが2025年と同じ、あるいはすべて変わった、と判断することもできません。最新のバッグの中身を知りたい場合は、大会名と取材日が明記された新しいクラブ一覧で確認する必要があります。
自分のスコア改善に稲森選手のセッティングを役立てるなら、変更は一度に行わず、まず現状を記録するのが現実的です。練習場や弾道計測で各番手のキャリーと左右のばらつきを測り、同じ距離に重なるクラブ、逆に番手間が大きく空く箇所を見つけます。次に、コースで苦手な一打が「ティーショットの方向性」なのか、「長い距離からグリーンを狙う球」なのか、「短い距離の打ち分け」なのかを切り分けます。そのうえで一つの枠だけ見直せば、変更による効果を比べやすくなります。
また、方向性を学びたいなら道具だけでなく構え方にも目を向けられます。稲森選手は取材で、セットアップ時に左手で先にクラブをセットすると、体をスクエアに構えやすいと説明しています。これはクラブの型番とは別の、費用をかけずに試せる着眼点です。ただし、構え方が合うかどうかは個人差があるため、練習では狙った方向への打ち出しとミスの傾向を確かめながら取り入れましょう。

稲森佑貴選手のセッティングから学べる核心は、特定の14本をそのまま購入することではありません。取材時点を明確にしたうえで、ウッドとハイブリッドの距離のつながり、アイアンからウェッジへの移行、そして自分が安心して構えられる一本をどう選ぶかを考えることです。まずは手持ちのクラブの実測値を並べ、足りない役割を一つ見つけるところから始めてみてください。



